
私たちの生活を突き動かすのは、禁欲か贅沢か。資本主義経済のエンジンをマックス・ウェーバーは精神的な禁欲に求めたのに対し、19世紀フランスの宮廷恋愛という題材を用いて、ヴェルナー・ゾンバルトは本書で恋愛と贅沢に求めます。

贅沢は、セックス、不倫、買売春、服飾浪費と深く結びついて、どのような社会を形成していったのでしょうか。
書誌
原著はドイツ語で1913年に出版されたWerner Sombart著『Luxe und Kapitalismus』です。日本では金森誠也氏により翻訳され、主に以下の版が刊行されています。
- 論創社版:ヴェルナー・ゾンバルト著、金森誠也訳、四六判、303ページ
- 講談社学術文庫版:ヴェルナー・ゾンバルト著、金森誠也訳。ウェーバーとの対比を強調した内容説明が付されています。
著者のヴェルナー・ゾンバルト(1863-1941)は、ドイツの著名な経済学者・社会学者で、マックス・ウェーバーと並ぶ近代資本主義論の巨頭です。
出版状況
原著は1913年にDuncker & Humblot社から刊行され、ゾンバルトの代表作『近代資本主義』シリーズの一環として位置づけられます。日本では1980年代以降、論創社や講談社学術文庫から翻訳版が出版され、講談社学芸アーカイブでも電子版や試し読みが提供されています。
講談社学術文庫版では、資本主義成立の文脈でウェーバーの禁欲的倫理論に対する対立軸として紹介され、学術的な人気を博しています。論創社版は詳細なページ数から包括的な内容を反映した装丁です。
目次
本書は5章構成で、近代社会の変容から資本主義の誕生までを論理的に展開しています。全章共通の目次は以下の通りです。
- 第1章 新しい社会
- 第2章 大都市
- 第3章 愛の世俗化
- 第4章 贅沢の展開
- 第5章 奢侈からの資本主義の誕生
解説
ゾンバルトは、資本主義の精神をプロテスタントの禁欲ではなく、宮廷社会における贅沢と恋愛の文化に求めます。ウェーバーが宗教的倫理を強調したのに対し、ゾンバルトは女性の台頭と非合法的恋愛(姦通、蓄妾、売春)が贅沢需要を生み、それが産業拡大と資本主義の基盤を形成したと主張します。
主な論点
- 贅沢の推進力:宮廷文化で育まれた贅沢欲求が新たな市場と産業を生み、資本主義を促進。高級品需要の増大が経済成長の原動力です。
- 恋愛の商品化:愛が世俗化・物質化し、ジュエリーや高級旅行が愛の象徴に。女性が贅沢を求めることで男性の資本蓄積を促したと分析。
- 社会的文脈:大都市の発展と愛の世俗化が贅沢文化を加速。「非合法的恋愛の合法的な子供である奢侈は、資本主義を生み落とすことになった」との名言が象徴的。
学術的意義と批判
本書は文化的要因を経済発展に結びつける先駆的研究で、ヴェーバー論を補完・対立させる視点を提供します。一方で、女性や贅沢を過度に強調する点で現代的批判もありますが、資本主義の多角的理解に寄与しています。
全体として、経済史を超え、文化・ジェンダー論の観点からも読み応えのある一冊です。



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