西欧精神医学背景史

4.0
推薦書
ルル
ルル

精神医学における独仏分裂やフロイトの登場など、テーマそのものが面白いです。さらに、独仏精神医学の発達にオランダが大きな影響を与えていた点を指摘。この指摘のおかげで、イギリス産業革命の土台にオランダの存在を想像できるようになりました。

書誌

項目 詳細
書名 西欧精神医学背景史
著者 中井久夫
出版社 みすず書房
初版 1999年12月10日(みすずライブラリー)
ISBN: 978-4-622-05046-9(ISBN-10: 4622050463)
ページ数: 246頁
定価: 2,310円
新装版 2015年11月25日
ISBN: 978-4-622-07970-5
判型: 四六判
ページ数: 256頁
定価: 3,080円(本体2,800円)

新装版では、キリスト教と意識概念の関連、1970年代以降の動向についての新文を追加。

出版状況

初版は1999年12月にみすず書房の〈みすずライブラリー〉シリーズとして刊行され、ページ数は246頁でした。2015年11月25日に新装版が発行され、ページ数が256頁に増え、内容を一部更新していますが、現在は品切れ状態です。中古市場では入手可能で、価格は700-800円程度のものが見られます。中井久夫の著作集『中井久夫集』では本書は除外されており、単独の重要な単行本として位置づけられています。

目次

本書は古代ギリシアから現代の精神医学までを時系列・テーマ別に21章構成で展開します。以下は詳細な目次です。

  • 1 古代ギリシア
  • 2 ギリシア治療文化の外圧による変貌
  • 3 ヘレニズムに向かって
  • 4 ローマ世界とその滅亡
  • 5 中世ヨーロッパの成立と展開
  • 6 魔女狩りという現象
  • 7 魔女狩りの終息と近代医学の成立――オランダという現象
  • 8 ピネルという現象――一つの十字路
  • 9 ヨーロッパ意識の分利的下熱
  • 10 ピューリタニズムと近代臨床
  • 11 フランス革命=第一帝政時代と公式市民医学の成立
  • 12 啓蒙君主制下の近代臨床建設
  • 13 新大陸の“近代”
  • 14 大学中心の西欧公式精神医学
  • 15 力動精神医学とその反響
  • 16 一九世紀の再展望と二〇世紀における変化
  • 17 西欧“大国”の精神医学
  • 18 西欧“小国”の精神医学
  • 19 ロシアという現象
  • 20 “向精神薬時代”と巨大科学の出現
  • 21 神なき時代の西欧精神医学

解説

『西欧精神医学背景史』は、単なる精神医学の年表ではなく、西欧の宗教的倫理観・人間観との深い関連の中で精神医学の歴史を論じた異色の名著です。ヒポクラテース、ガレノスからブールハーフェ、ピネル、フロイトに至る流れを、古代ギリシア、中世の魔女狩り、市民社会の成立といったヨーロッパ史の文脈で描き出します。著者中井久夫は「精神医学史を書く試みはヨーロッパの歴史そのものに入り込み、そこに湧く疑問に取り組むことになる。それ抜きにただの精神医学史を書くことをいさぎよしとしない」とあとがきで述べ、広範な研究書を基に一行の裏に論文を重ねるように構築された緻密な内容です。

新装版では、キリスト教と意識概念の関連や1970年代以降の動向を追加し、現代性を持たせています。この本は「人類史の中でヨーロッパとは何か」を問いかける哲学的深みを持ち、精神医学を超えた文化史としても評価されています。中井久夫の他の著作(例: 『分裂病と人類』)と並び、彼の精神医学への独自の洞察を象徴する幻の書として知られ、専門家から高い称賛を受けています。

コメント